大判例

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東京高等裁判所 昭和40年(ネ)1086号 判決

(一) 一般に、民法三九五条により建物の抵当権の登記後に対抗力を備えた賃貸借をもつて抵当権者に対抗することができた場合でも、抵当権実行による差押の効力が生じた後に右賃貸借(短期賃貸借)の期間が満了したときは、賃借人は借家法二条による法定更新をもつて抵当権者又は右抵当権実行手続における競落人に対抗することができないと解するのが相当である(最高裁昭和三八年八月二七日判決、民集一七巻八七一頁参照)。従つて本件の場合、控訴人主張の抵当権者の承諾の点を一応除外して考えれば、仮りに当初の賃貸借が控訴人主張のように合意更新されたとしても、右更新された賃貸借は、前記競売申立記入登記により差押の効力が生じた昭和三七年一〇月二〇日の後である昭和三八年五月一四日にその期間が満了したこととなるから、控訴人は右賃貸借が借家法二条により更に法定更新されたことをもつて競落人である被控訴人に対抗することはできないものというべきである。

(二) そこで、控訴人主張の抵当権者の承諾の点についてみるに、前掲甲第一号証によれば、前記当初の賃貸借は抵当権者である三協信用金庫の承認を得て締結されたものであること、右賃貸借契約中には、期間は一年とするが期間満了後も賃貸人たる砧工業株式会社に異議なき場合は更に一年継続する旨の条項がおかれており、右金庫はこの条項を含めて右賃貸借契約を承認したことが認められる。しかしながら、建物の抵当権と賃借権との優先劣後の関係は、単に当該抵当権者及び賃借権者だけの利害に関するものではなく、競落人その他の第三者の利害に重要な影響を及ぼすものであつて、もし公示方法を伴わない抵当権者の承諾の有無により右優先劣後の関係が左右されるとすれば、それらの第三者に予測しない損失を与えることとなるから、賃貸借についての抵当権者の承諾は、競落人その他の第三者に対する右賃借権の対抗力の有無を判定する上においてなんの影響もないものと解すべきである。従つて本件の場合、右認定の抵当権の承認のあつたことを合わせ考慮しても、控訴人はその主張する法定更新後の賃借権をもつて競落人である被控訴人に対抗することはできないものといわなければならない。

(三淵 伊藤 村岡)

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